続いては速度に関する音楽用語です。
これは速度に限らず、音楽の印象を定めることもあります。
日本語に訳す都合でそうなるけど、実際の意味はこういうところにある、みたいなことをしっかりわかっていると、演奏の際の手助けにもなると思います。
「遅い」テンポの音楽用語
読み方は「レント」です。
「遅い」と訳されます。原義としても遅いなので、これは言葉通りに受け止めて大丈夫です。
他にも「たるんだ」「締まりのない」という意味も持っていますが、あえてそれを考える必要はあまり感じることがありません。
単純に遅い楽曲でよく使われる用語です。
読み方は「ラルゴ」です。
日本語だと「遅く」と訳されてしまうことがありますが、正確には「幅広く」という意味になります。
幅広く堂々とゆったりとしているから、結果としてテンポは遅くなる、ということになります。
荘厳な曲にあうテンポでしょうか。
読み方は「アダージョ」です。
これもまた遅い系の指示ですが、原義としては「ゆっくり」「静かに」などの意味を持ってます。
子守唄なんかはAdagioと言えますね。
遅い系の音楽用語を3種類取り上げてみました。
「Lento」「Largo」「Adagio」は結果として遅いテンポが求められますが、同じようなテンポだったとしても、表現したいことは様々であることが伺えますね。
「普通な」テンポの音楽用語
読み方は「アンダンテ」です。
「歩くくらいの速さで」「適度に緩やかな」などと訳されます。
原義では「今の」とか、「平凡な」とか、「平明な」という意味があります。
イタリア語の「andare」という動詞が「行く、歩く」などという意味を持っています。
読み方は「モデラート」です。
原義は「控えめの」とか「程よい」と訳されます。
音楽辞典などでは「普通の速さで」などと訳されることが多いです。
「普通の速さ」ってなんだろう、と思う方でも原義の意味であればイメージしやすいかもしれないですね。
一つ前の「Andante」が歩くくらいの速さで「Moderato」が普通の速さですが、「Moderato」の方が早いテンポです。
控えめなテンポよりも、歩くくらいのテンポの方が遅い。
私は歩くテンポの方が早いかも、と思ってしまいますが、こうした音楽用語が使われるようになった時代の歩く速さと、現代の人(特に都会に住む人)の歩く速さは全然違うそうです。
「速い」テンポの音楽用語
読み方は「アレグロ」です。
この辺りは「速い」範疇に入ってきます。
原義は「快活な」とか、「陽気な」という意味を持っています。
雰囲気の明るい曲で使われることが多い指示です。
読み方は「ヴィヴァーチェ」です。
こちらも「Allegro」に比較して近い性質ですが、前者よりもっと生き生きと、命のきらめきがギラギラ輝くような、そんなイメージになります。
読み方は「プレスト」です。
これはさらに「速い」指示です。
原義からして「急いで」「早く」などと訳されます。
明るさどうこうよりも、慌ただしさだったり猪突猛進感だったり、とにかく先を急いでいるような印象を求める音楽用語です。
速度を変化させる用語
読み方は「リタルダンド」です。
「リット」と読まれることも多いです。
次第に遅くという意味があります。
初心者の方はこれが見えた瞬間に遅くしてしまいがちですが、「だんだん遅く」なので気をつけましょう。
読み方は「アッチェレランド」です。
「rit.」と反対に、こちらは次第に速くという意味です。
読み方は「メノモッソ」です。
「今までより遅く」という意味です。
原義的には「もっと動きを少なく」みたいな感じです。
「rit.」と違って、だんだんゆっくりにしていくというよりも、その場所でテンポが緩みます。
読み方は「ピウモッソ」です。
「meno mosso」と反対に、「今までより速く」という意味です。
やはりこちらも原義的には「もっと動きを多く」となります。
読み方は「アテンポ」です。
「元の速さに戻す」という意味があります。ここでいう元の速さとは、一つ前の速度変化を指しています。
大抵、「rit.」や「accel.」の後に、その指示を打ち消すために使われます。
読み方は「テンポプリモ」です。これは覚えないと読めないですね。
あるいは、tempo primo と書くこともあります。primoは英語の「first」と同じ意味です。
「はじめの速さに戻す」という意味です。「a tempo」と違って、こちらは「その曲の一番最初の速さ」に戻るときに使います。
早いテンポで始まった曲が、途中で遅いテンポで雰囲気が変わり、また元に戻る、みたいな時に用いる用語です。
終わり
ごく一部ですがご紹介しました。
速度用語は単に遅いか速いかだけを考えるのではなく、「何を表現したいから結果的にこのテンポなのか」ということを考えられるようになると、ステップアップ出来ると思います。
語学の試験みたいになってしまうので、練習問題はありません。
出来るだけ実際の曲にたくさん触れて、どういう印象の曲にどういう指示が書かれているのか、感じて考えていくと自然と覚えられると思います。
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- 第1章:楽譜と音の高さ
- 第2章:耳で「ドレミ」を聴く
- 第3章:「音名」と「階名」
- 第4章:リズムの表し方
- 第5章:音を書き取る「聴音」のススメ
- 第6章:音楽用語について
- 強弱に関する音楽用語
- 速度に関する音楽用語
- 繰り返しに関する音楽用語
コメント
壮年合唱を一所懸命に楽しんでおります。今回この欄を知ることができて、大変助かりました。ボケ防止と昔一寸かじったことの合唱をこの歳になって楽しめることを、
幸せと云うのでしょうか?全くの素人ですが健康で活力ある生活をすることが
大事であることを実感しております。同年代と語り合え歌いあう喜びを分かち合える
音楽はとても身近なものと思っております。 ありがとうございました。