前の章でも触れましたが、通常、人は音を相対的に認識しています。
階名は相対的に聴こうとする人間の認識に沿った名称であり、耳で聴こえるように「ドレミ」をつければ良いわけですから、大変便利なものですし、音楽の実態に沿っています。
ただ、これが楽譜となるとある問題が発生します。
五線譜を使った記譜法というのは、基本的に絶対的な音の高さを書き記しています。
そして、音名は絶対的な音の高さを示す名称であり、「ハ」の音の位置は常に一定です。
一方、階名は基準となる音によって変化していきます。
「ハ長調」であれば「ハの音がド」ですが、「ニ長調」であれば「ニの音がド」になりますし、「ホ長調」であれば「ホの音がド」となります。
どんな高さであってもそこを基準とすることは出来ますので、「ド」の位置は曲ごとに変化できます。
五線譜を使った記譜法は「絶対的な音の高さ」を示すことに長けている方法です。
そのため、基準音が移動する階名を読もうとした場合、楽譜のシステムをきちんと理解しないとどこが「ド」となるのか読み取ることが出来ません。
ですので、階名と楽譜を結びつけるためには、音階という概念と、それがどのように楽譜上で表現されているかを学ぶ必要があります。
また前の章で述べたことになりますが、「ドレミファソラシド」を定義するのは、それぞれの音と音の幅です。
全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音。
このような幅で並べられると、人はそれを「ドレミファソラシド」と認識します。
そして、この音階のことを「長音階」と呼びます。
音階とは、ある特定の法則に従って並べられた音の配列のことを指します。
特定の法則、というのはここでは全音、全音…の音幅の並びのことです。
鍵盤楽器は、ハ長調の時に白鍵だけを並べればハ長調の音階となるように作られています。
ただ、ハ長調以外の長音階を作ろうとした時には、白鍵だけでは長音階を作ることが出来ません。
例えば、へ長調を作ろうと思って「ヘ音」から白鍵を弾いていくと、ミファの間が全音になってしまいます。
逆にファソは半音になってしまいますね。
これを正しい長音階とするために、ここではフラットの力を使います。
白鍵のままでは高く、正しい音程にならない「ロ音」にフラットをつけて半音下げると、ミファの間が半音に、そしてファソの間を全音とすることが出来ました。
つまり、「へ長調」の音階でいるためには、「ロ音」は常にフラットをつけていなくてはいけないわけです。
ですが、ロ音が出てくるたびにフラットをつけるのは大変手間で面倒です。
そこで、楽譜の頭に「この楽譜は常にロ音にフラットがついています」というマークとして、フラットを書いておくことにしました。
これを「調号」と呼びます。
このト音記号の右横に書いてあるフラット(あるいはシャープの場合もあります)を調号と呼びます。
このマークがついている限り、何も注意書きがなければその高さの音にはその記号をつけてください、という意味になります。
別の言い方をすると、この指示通りにシャープやフラットをつければ、この楽譜の示している音階になりますよ、というところでしょうか。
任意の音を「ド」と定めた時に、音の幅がきちんと「ドレミファソラシド」となるように調号をつけていくわけですから、「調号を見れば、その楽譜の基本的な「ド」の位置がわかる」というわけです。
さて、そうするとまた問題が出てきます。
上の楽譜は、「ヘ音」を「ド」とする場合の調号でした。
1オクターブの中には12種類の音高があるわけですから、単純に考えて12種類の「ド」が存在します。
最終的には全て覚えてしまうに越したことはありませんが、いきなりそれはちょっと難しいでしょう。
なので、「調号を暗記せずとも、ドの位置がわかる方法」を習得しておきましょう。
覚えておくことは2つだけです。
♯系の調号がついているときは、ついている一番右側の♯がシの位置に。(シャープのシ)
♭系の調号がついているときは、ついている一番右側の♭がファの位置に。(フラットのファ)
この2つだけです。
詳しくは動画を見ていただいた方がわかりやすいかと思います。
なお、動画内の解説において、階名は英語を使用していますので、シは「Ti(ティ)」となっています。
また、この記事の中では長音階のみを取り扱っていますが、動画内では短音階についても触れています。
短音階は「ラ」をスタートとした音階のことです。
このルールを覚えておけば、調号から階名は簡単に読み取ることができます。
音名は音名で、五線譜と音符の位置を対応して覚えましょう。音名を読む際には「嬰」「変」をつけることも忘れずに!
練習問題です。
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- 第1章:楽譜と音の高さ
- 第2章:耳で「ドレミ」を聴く
- 第3章:「音名」と「階名」
- 第4章:リズムの表し方
- 第5章:音を書き取る「聴音」のススメ
- 第6章:音楽用語について
- 強弱に関する音楽用語
- 速度に関する音楽用語
- 繰り返しに関する音楽用語
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