さて、ここまであえて触れてきませんでしたが、音を示す名前には二種類あります。
それぞれ「音名」と「階名」と呼びます。
音名とは
音名とは「絶対的な音の高さ」を示す名称です。
ここまでの解説で「ハニホヘトイロハ」で示したものはすべて音名です。
どのような場合でも、「ハ音」は「ハ音」であり、ハ音がイ音になったりすることはありません。
「絶対音感」と呼ばれる能力では、これを聴き取っています。
ただし、その特定の音の高さをなんという言葉で記憶しているかは、その人の訓練方法によります。
英語の「C」で記憶している人もいれば、日本語の「ハ」で記憶している人、あるいは「ド」という言葉で記憶している人もいます。
階名とは
そしてもう一方の階名ですが、これは「相対的な音の高さ」を示す名称です。
ここまでの解説で「ドレミファソラシド」で示したものはすべて階名です。
前項での説明の通り、階名はそれぞれの音の幅によって定義されるため、何かひとつしか音がない場合、階名は定義することが出来ません。
その音に対して、全音全音半音…と音が重なっていくと、これは「ドレミファ」だな、という風に定義することが出来ます。
音名の場合は、英語や日本語、場合によってドイツ語などさまざまありますが、階名として使われている言葉は基本的には「ドレミ」しかありません。
現状、日本で音楽を学ぼうと思った場合、音名と階名はきちんと区別されない場合がほとんどです。
それは「本来階名であるドレミを、音名として使用しているため」です。
ドレミを音名として使用する場合は、常に「ハ長調のドレミ」の位置で名前を扱います。
ですが、この使用方法は皆さんが持っている相対音感を生かすことが出来ません。
一番の原因は、♯や♭を発音しきれないことにあります。
歌う際にいちいち「ドのシャープ」なんて言っていられませんので、どうしても「(シャープをつけているつもりで)ド」という場面が度々出てきます。
そうすると、階名であれば「ドレ」と歌った時には必ず全音の幅になるものが、時には半音になってしまったり、あるいは逆に全音よりも広い音程幅になってしまうこともあります。
言葉と音程が一定にならないため、音程を認識する上で混乱が生じるのです。
もうひとつの理由として、言葉と調性感が一致しない、ということが挙げられます。
みなさんが音楽を聴いていて「あ、ここで終わりだな」とか「ここが一番盛り上がるな」とか、聴きながらなんとなく先のことが予測出来ることがあるかと思います。
調性という仕組みで作られた音楽は、その音自体が進みたかったり、止まりたかったりするエネルギーを持っているからです。
「ド」は始まりや終わり。「ソ」はすごく前に進みたい。「シ」は絶対に「ド」に上がりたい…。
それぞれの階名には性格があります。
音名で音楽を認識する、というのは、こうした階名のもつ性格を無視した読み方にならざるを得ないのです。
言葉で説明するとすごく難しく見えますがが、聞けば当たり前に感じるものですから、相対音感を生かすためにも、音名と階名はしっかりと区別して使いたいものです。
このページでは練習問題はありません。
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- 第1章:楽譜と音の高さ
- 第2章:耳で「ドレミ」を聴く
- 第3章:「音名」と「階名」
- 第4章:リズムの表し方
- 第5章:音を書き取る「聴音」のススメ
- 第6章:音楽用語について
- 強弱に関する音楽用語
- 速度に関する音楽用語
- 繰り返しに関する音楽用語
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